脂肪溶解注射とは
脂肪溶解注射は、別名メソセラピーともいわれ、ダイエット・美容の一手段として、近年、ますます一般的になってきている施術方法です。
脂肪溶解注射では、薬剤を皮下脂肪に直接注射し、薬剤の浸透した部分の脂肪細胞を破壊して溶解することにより、脂肪を減少させる効果が期待されます。
継続的な運動や厳しい食事制限を行うことなく痩せられる、また、通常のダイエットでは痩せることが難しかった部分の脂肪を落とせるなど身体に負担の少ない部分痩せの方法として注目を集めています。
歴史と仕組み
脂肪溶解注射は1950年代にフランスで開発されたものですが、近年のダイエット・美容目的での利用はアメリカで発達してきました。
脂肪溶解注射で使用される薬剤は、主に大豆から抽出される成分で成り、この成分には脂質の代謝を高め、血管壁に付着したコレステロールを溶かす作用があります。
すなわち、脂肪を溶かす作用となりますが、溶けた脂肪は血管やリンパ管を通り、そのまま汗や尿などと一緒に体外に排出されます。
この薬剤は、元々は脂肪肝や高脂血症の治療に使用されてきた薬剤であり、その脂肪を溶かして排出する作用を利用したのが、脂肪溶解注射ということになります。
このため、薬剤の安全性という意味では、脂肪溶解注射は比較的安全な治療手段といえるかもしれません。
なお、人間の脂肪細胞の数は変動しないため、脂肪溶解注射で減少させた分の脂肪細胞が再び増加することや再生することはありません。
期待できる効果
脂肪溶解注射に期待される効果ですが部分的に痩せることができる点が特徴です。
痩せたいと思う箇所をピンポイントに狙って薬剤を注入できるため、通常のダイエットでは難しい二の腕、太もも、下腹などの部分痩せが可能です。
加えてセルライトにも効果期待できるといわれており、通常のダイエットではなかなか消えることのないセルライトも脂肪細胞を破壊する際に除去されやすいと言われています。
また、太りにくい体質になる効果も期待されています。
通常のダイエットでは、脂肪細胞を小さくすることしかできませんが、脂肪溶解注射は脂肪細胞の数を減少させます。そのため、たとえ将来再び脂肪細胞が大きくなってしまっても、脂肪細胞の数自体が減少しているため、結果的に太りにくいということになります。
治療に関して
注射について
脂肪溶解注射は、一般的に美容皮膚科や形成外科で受けることができます。
治療の流れとしてはカウンセリング→注射→アイシング、という流れが一般的です。
なお、注射針を用いた医療行為ですので、美容サロンなどでの施術は禁止されています。
1回の注射で手のひら程度の範囲に効果が期待されると言われており、効果の実感のためには、一般的に1~2週間置きに4~5回以上の注射が奨励されています。
部位にもよりますが、早ければ三日後から効果を実感し始めることが多いようです。
注射後の過ごし方として、日常的な軽い運動を行うことで代謝が高まり、効果がより促進されるともいわれています。
ダウンタイム・副作用
注射後、一時的に注射箇所が赤くなることはありますが、ほとんどの人の場合、注射当日中には赤みが消え、目立たなくなります。
また、注射箇所付近に突っ張り感を感じること、内出血や腫れが生じることもありますが、いずれも数日~1週間程度で落ち着き、時間の経過とともに気にならなくなることがほとんどです。
上記のほかに、クリニック・病院において、発生し得る副作用として指摘されているものでは、熱感、硬結、アレルギー、痺れ、倦怠感、頭痛、筋肉痛、蕁麻疹、痒み、むくみ、発熱などがあり、重篤な場合ではアナフィラキシーショックが生じることもあるといわれています。
これらの発生は比較的稀といわれていますが、体質に応じて医師に事前に相談を行うことが必要で、施術後の経過についても観察が必要です。
施術する際の注意点
多くのクリニック・病院での注意事項として、注射当日は、(湯船につかる)入浴、サウナ、プール、過度の運動、飲酒などは禁止されています。
注射当日はシャワーのみとし、体を温め過ぎないように過ごすことが大切で、また、注射箇所をこすったりしてはいけません。
また、脂肪溶解注射を受けられない人として、妊娠中・授乳中の人、基礎疾患(糖尿病・腎臓疾患・心臓疾患・肝臓病)のある人、高血圧・高脂血症・貧血の人、感染症や発熱のある人、治療希望部位に傷などがある人、血が止まりにくい・出血しやすい人、大豆アレルギーの人などが挙げられます。
特に、脂肪溶解注射の薬剤に大豆の成分が使用されていることから、大豆アレルギーについては注意が必要です。
脂肪溶解注射のメリット
脂肪溶解注射のメリットは手軽に身体の負担が少ない状態で部分痩せができる点です。
下記でメリットについて詳しく説明していきます。
運動・食事制限が不要
薬剤で脂肪を溶解・排出するため、通常のダイエットで必要とされる継続的な運動や厳しい食事制限は不要となり、「続かない」「辛い」といったダイエットの典型的な悩みからは解放されることになります。
また、1回の施術時間もわずか10~30分程度であり、短時間で効果を得やすいといえます。
身体的負担が少ない
メスを使用する美容整形手術などと異なり、身体に傷跡が残らないのはもちろん、ダウンタイムも短く、身体への負担を軽くすることができます。
また、注射時の痛みもほとんどの人が問題ないと感じる程度の痛みといわれており、クリニック・病院によっては、注射前にクリームタイプの麻酔薬を塗付するなど、より痛みの少ない方法を採用しているようです。
脂肪溶解注射のデメリット
多くのメリットの一方で、やはり、デメリットも存在します。
脂肪溶解注射が医学的な手段を用いた方法であることからしても、デメリットについても一つ一つ、慎重に検討する必要があります。
費用面
ダイエット・美容目的での脂肪溶解注射は、保険適用外です。そのため、自費での施術となります。
クリニック・病院によって価格に差がありますが、都内では、1回10,000円前後がおおよその相場といえます。
上記の通り、最低でも5~6回分の注射が必要になるため、安価とはいえない価格帯かもしれません。
なお、使用される薬剤はクリニック・病院で独自に配合するため、これが価格の開きに影響することがあります。
また、1回当たりの価格がお得になる回数券など、継続がしやすい料金体系を設定しているクリニック・病院もあるようです。
副作用
上記の通り、主に注射箇所の赤み、突っ張り感、内出血、腫れなどの副作用があります。
多くの場合、数日~1週間で症状は落ち着きますが、体質によってはアレルギーなど重篤な副作用も発生し得るため、医師との事前のカウンセリングが不可欠です。
まとめ
脂肪溶解注射は、運動や食事制限を必要とする通常のダイエットに比べストレスが少ないのが特徴です。
そのため、簡単、部分痩せが叶うなど、メリットの多い魅力的なダイエット・美容法といえるかもしれません。
実際、薬剤にもある程度の安全性は確保されており、メスを使用する美容整形手術などと比較しても、身体への負担やリスクは格段に小さいと考えられます。
とはいえ、やはり注射により薬剤を体内に注入するという医療行為であること、安価とはいえない費用が発生することなど、慎重に検討すべき事項が多いのも事実です。
身体への危険を最小限にしたうえで、希望する効果を得られるよう、医師との事前カウンセリングを十分に行い、納得したうえで治療を受けるようにしましょう。